講演概要:

20世紀後半、大気の壁を越えた宇宙からの天体観測が始まると、天文学は新たな波長域の情報を得て大きく発展しました。名古屋大学では1960年代、早川幸男教授によりX線と赤外線の観測グループが立ち上げられ、世界の第一線での日本の活躍が始まりました。講演では宇宙空間という過酷な環境の中で展開されるスペース天文学、特にX線観測における新たな観測手段開発の歩みをたどり、それらによって初めて明らかにされて来た激しい宇宙の姿を紹介していただきます。また、國枝氏が師匠と仰ぐ4人の先達の「語録」と、その教えをお話しいただきます。

 國枝秀世氏は、日本のX線天文学の黎明期から、その装置開発および観測研究の最前線で活躍され、「あすか」衛星や「すざく」衛星での日米協力を推進し、「ひとみ」衛星に搭載されたX線望遠鏡の開発製造をリードされるなど、名古屋大学の掲げる「ものづくり」をまさに体現されてきました。X線天文衛星の開発の現場や、それらが切り開いたブラックホールなどの観測について、わかりやすくお話しいただきます。